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AIは私たちの職を奪ってしまうのか?

更新日:2023年6月23日


AIは私達の職を奪ってしまうのか?

Chat GPTがリリースされて6ヶ月以上が経ちどんな人にもAIが身近な存在となりました。

AIに関して一番懸念されることは「AIがわたしたちの仕事を奪ってしまうのでは?」という不安ではないでしょうか?実際にあるレポートによると、2023年5月のアメリカ内でAIが原因の失業の数は4,000件と報告されています。全体の失業率は昨年の5月と比べると20%アップと高い数値にみえます。


AI導入によるポジティブなレポートもあります。


大きなソフトウェア企業のカスタマーサービス部署を対象に行われたある研究です。この研究ではChatGPTによって労働者の生産性が大幅に向上したことが明らかになりました。さらに興味深いことに、その多くの向上は、スキルの低い労働者によるものでしたが、元々スキルの高い労働者にはわずかな向上しかみられなかったようです。つまり、AIは、低いスキルを持つ労働者とよりスキルのある労働者との生産性のギャップを縮めたという見解です。


この見解はとても面白いもので、過去40年間のテクノロジーが労働者にもたらす効果の見解と全く真逆のことなのです。多くの経済学者はコンピューターなどのテクノロジーは労働による不平等を生み出すものという考えを持っていました。


本当にAIが導入されることでわたしたちの仕事がこのまま奪われていくのでしょうか?


ポッドキャスト「Planet Of Money」のエピソード「How AI could help rebuild the middle class」をもとにある専門家の考え方をシェアします。




歴史的ターニングポイント

 

世界でも最も優れた労働経済学者の一人として広く評価されている、MITのデイビッド・オーターさんは今後AIがわたしたちの労働に与える影響を考える上で、テクノロジーと労働の歴史がとても役に立つと主張します。


歴史的なターニングポイントは大きく二つあります。産業革命とコンピューターの導入です。



産業革命

産業革命

産業革命以前、製品の製造においてすべての工程を担当していた職人が多く存在しました。服や家屋、道具などを作る際には、職人がすべてのステップを行っていました。大量生産の時代には、製造方法が変わりました。


それは、製品を一連の小さなステップに分割し、機械や管理者、そして比較的低いスキルを持つ労働者が順番に作業するというものでした。その結果、多くの職人の技術が置き換えられることになったのです。この変化に反対をするグループももちろんでてきました。(The Luddites)


この変化が生まれた当初は、職人から取り替えられた工場労働者は、あまりスキルを必要とされない上に賃金もより少ないものとなり、全体的に好ましくない変化にように思えました。


しかし、機械が作れるものがどんどんと複雑になったです。衣類だけでなく車が作れるようになったり。そうなってくると工場長はよりスキルのある工場労働者が必要となってきたのです。高価な機械を使い精密な製品を作るためには、工場内でのそれなりのルールが必要となりました。このルールに従って働く工場労働者を、大量生産工場で働く”中流技術者”とデイビッドさんは呼んでいます。


大学での学位を持たない人々にとって中流技術職は魅力的な仕事でした。いままで学位を持っていないとレストランや掃除員として働くことしかできませんでしたが、こういった仕事は世の中に必要とされますが誰でもできるために低賃金でした。ところが中流技術職はある程度の知識やスキルが必要とされるために、そこそこの賃金が与えられたのです。この中流技術職の出現により、アメリカの中流階級は大きく成長することができたのです。


産業革命 = 

職人が仕事を失い、中流技術職という仕事をうみだすことで中流階級を助けた。(学位なしでも賃金のよい仕事)



コンピューターの出現

コンピューターの出現

産業革命で生まれた中流技術職がロボットにより自動化されてしまいました。さらに事務職はコンピューターソフトウェアによってとって変わられたのです。


では悪いことばかりだったのでしょうか?


高度な教育を受けた労働者(医師や弁護士、マーケターや研究者など)はイーメール、スプレッドシートやインターネットのおかげでさらに仕事のパフォーマンスをあげることができました。情報処理やルーチンな業務の自動化をすることができたからです。デイビッドさんは”エリート階級”と呼んでいます。


一方、フードサービス、清掃、セキュリティ、エンターテイメント、レクリエーションなど、人間の労働を必要とする仕事をする人々には、ほとんど良いことがなかったのです。この階層の人々にとってコンピューターの出現はほぼ影響を与えませんでした。


しかし、中流技術者は中程度のスキルを必要とする職業から追い出されることになったのです。そんな彼らが上に進むことは簡単なことではありません。ある程度の大人が、製造業の仕事を失った場合、法学位や医学位を取得する可能性はほぼないでしょう。その結果、トラックの運転やレストランでの仕事、セキュリティガードとして働く可能性が高くなるでしょう。

つまり、コンピューター時代は実際には大量生産の専門知識の価値を低下させ、エリートの専門知識に対する需要を大幅に増加させたのです。



コンピューター時代 =

工場で働く中流技術者がロボットに職を奪われ、エリート階級は仕事の自動化で恩恵を受ける。各階級間での核差が拡大。




AI時代(現在〜)


Erik Brynjolfsson、Danielle Li、Lindsey Raymondによる新しい研究が発表されました。それは、あるソフトウェア会社が古いバージョンのChatGPTを導入した後に、その会社と労働者に何が起こったかを調査したものです。彼らはこのAIシステムが労働力の生産性を大幅に向上させることを発見しました。しかし、興味深いのは、その技術を利用して恩恵を受けたのは一部の労働者であり、実際には経験豊富で高いスキルを持つ労働者はほとんど恩恵を受けていないということです。これは、これまでの見解を逆転させているように思われます。つまり、AIが下層階級を補完し、上位階級にはほとんど影響を与えていないのです。


これ以外にも似たような研究が発表されています。これらから言えることは、AIが階級間による生産性の不平等を減少させたということです。





今後の考察

 

ではデイビッドさんが考える今後の考察はどういったものなのでしょうか?


AIがエリート階級の専門知識を安くよりアクセスしやすくするというシナリオ。例えば、現在医療手続きを行いたい場合、医学の学位が必要です。それには10年かかります(アメリカでは)。それにより、こういった人々は希少で専門家であり、利用しようとすると高価になります。しかし、適切なツールがあれば、医学や医療に関する知識を持つ人々に一部のタスクを委ねることができます。彼らは医学の学位をとるために10年もの教育は必要ありませんが、より多くのことを行うことができます。アメリカでは看護師プラクティショナーがいい例ですでに存在しています。


良いシナリオは、AIがエリートの専門知識のコストを下げ、より利用可能にし、将来の中階級のスキルを持つ労働者の価値を高めることです。つまり中流階級によってAIは良いことになります。


また学位を取得して専門知識を学ぶ必要があるエリート階級の職の価値が下がることになるので、わざわざ大学に行く人が減る可能性も予想されます。


私たちは、大規模な退職人口を抱えています。ほとんどの先進国、中国でさえ同様に、縮小し高齢化しているか、人口が成長していないという問題に直面しています。これは、高齢者の介護を含む、私たちが行う必要のあることを実現するために、実際にはさらに多くのオートメーションが必要な世界なのです。よって私たちが仕事や職をなくしてしまう心配はデイビッドさんはしていないと語ります。それよりデイビッドさんが心配しているのは、専門知識の価値が低下することです。


わかりやすい例で例えると、タクシードライバーです。GPSを使えば誰しもがドライバーのプロになれる思うかもしれません。ただしそれは大きな間違いです。

GPSが出現する前の時代、ロンドンのタクシードライバーは何年もかけて全てのルートを記憶する必要がありました。これは誰しもができることではないので、彼らをエキスパートにしたのです。しかし現代では記憶をする必要がなく、スマホがあるだけで十分なのです。このようにかつては価値のあった「ロンドンタクシードライバー」という専門知識の価値ががくっと下がってしまったのです。


とはいってもデイビッドさんはこれが全ての職に起こることは考えにくいと主張します。私達人間がAIより優れている部分が多くあるからです。私達には適応能力がありますし、常識への理解、相手の気持ちを察することもできます。そしてなんといっても手や足といった身体もあります。




私なりの考え

 

では今私は何をすべきなのか?上記の考察も含めて感じたことがいくつかあります。


「自分」を一番上手くできるのは自分しかいない。

AIが存在したとしてもしなかったとしても、自分の職が奪われるチャンスは誰にでもあったと思います。ビジネスアイデアを真似されたり、もっと高パフォーマンスの同僚にポジションを奪われたり。AIが出現したことによりあなたの職自体が必要とされなくなってしまう可能性はどんな職にでもあるかもしれません。


ただし、「自分」はAIであってもあなたより上手に行うことは不可能です。なので最終的には「自分」という専門知識(エキスパート)の価値を高めることが究極かもしれません。


具体的には、ポッドキャストやブログ、SNSあるいはユーチューブで「自分」をマネタイズ化する。例でいうとポッドキャストのJoe Roganだったり、ユーチューバだったり。彼らは「自分」の名をマネタイズ化できているので、AIにとってかわれる危険はありません。


マネタイズできなくても、自分の上司やリクルーターとの人間関係に投資することで、「〇〇さんと一緒に働きたい、〇〇さんがチームにいると楽しい」とAIにお願いしてもよいことを好意という感情からあなたにお願いされる可能性もあります。


「自分」というエキスパートを極めると同時に価値を生み出していきたいですね。



そしてAIを利用する側に周るべきだと感じました。AIを使って何ができるのか?AIでできることとできないことの幅広い理解、これを身につけておいて損はないかなと感じました。

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