スコットランド・スカイ島横断ハイキング|スカイトレイル155kmの旅と出会い
- 4月13日
- 読了時間: 19分

スコットランド・スカイ島を横断する「スカイトレイル」は約150kmのトレッキングルート。山という山はないので、長距離ハイキング初心者でもチャレンジできる。私の初めての横断ハイキングとなった「スカイトレイル」についての体験を記事にしてみた。本当に最高の体験ができたので、ぜひ多くの人にも体験してほしい。
1.スコットランド・スカイ島とは?
スコットランド北西部に位置するスカイ島は、他ではあまり見ることがない大自然の風景が魅力の旅行者にも人気のスポット。ピクサー映画「Brave(ブレイブ)」(日本名:メリダとおそろしの森)の舞台としても知られている。
観光スポットだがほとんどの人は車で回るので横断ハイキング中は大自然を独り占めできること間違いなし。
2.スカイ島を横断するスカイトレイルとは?

スカイトレイルは正式なトレイルではないので、整備された道やトレイル標識はない。そのため地図が必要不可欠で、他のハイカーの足跡をたどって進んでいくことになる。スタート地点は、私たちのように南のBroadford(ブロードフォード)という街から出発し、最北端のRubha Hunish(ルバ・フニッシュ)という絶景ポイントでゴールする人もいれば、逆に北から南へ進む人もいる。

私たちは風向きを考慮し、またクライマックスに絶景が待っていることから、南から北への順路で進んだ。
3.スカイ島の天気について
スカイ島(スカイ)の名前の由来は、「Sky(スカイ)=雲」「ye(イェ)=島」。直訳すると「雲の島」と呼ばれるだけあり、どんな時期でも雨で濡れる準備をしていく必要がある。雨が降らなくても、トレイルが整備されていないため、必ず靴がびしょびしょに濡れてしまう。

ウォータープルーフの靴を履くのも一つの方法かもしれないが、私は100%ウォータープルーフな靴は存在しないと思っている。乾きやすく通気性の良い靴を履き、泥や水で濡れることに慣れ、歩きながら乾かす方が効率的だと感じた。スカイ島は風が強い日が多いのですぐに乾いた。序盤は水たまりを避けて歩いていたが、途中からは水たまりの中を歩くようになった。その方がスピードも上がる。


また、この6日間で全ての天気を体験したのではないかというくらい天気が良く変わった。(晴れ、雨、雪、氷、突風)どの天気でも対応できるように準備することをおすすめする。
4.スカイトレイルでの食事
スカイ島ではスーパーマーケットの数が非常に少ないため、事前に食料調達の計画が必須。大きなスーパーがあるのは主にブロードフォードとポートリーのみ。一方で、カフェやレストランがある町もあり、夕食を外で済ませる日もあった。通貨は英ポンドのため物価はやや高めに感じた。
5.スカイ島までのアクセス方法

エジンバラに空港に到着し一泊。その後電車でInvernessへ。そしてバスでBroadfordまで。(バス乗り継ぎ一度あり)帰りはバスでBroadfordまで。さらに別のバスでEdinburghまで。行きは予約をした。特に電車は予約をしないとするとでは、値段が大きく変わりそうだったので予約をおすすめする。帰りは予約なしだったが、問題なく購入できた。
DAY0:ブロードフォード (Broadford)
スカイトレイルのスタート地点であるBroadford(ブロードフォード)という街に、バスで夕方5時に到着予定だった。スーパーで食料を買い込んで少し歩いてテント泊をする予定だったので、この日を「DAY0」とする。旅にはトラブルがつきもの。Broadfordまでのバスに乗っていると急に「バンッ!」という大きな音が鳴り響いた。ドライバーは何事もなかったかのように運転を続けたが、バスは予定よりも早く停車した。車内マイクがないのでドライバーの声はよく聞こえなかったが、どうやらパンクしてしまったようだ。1時間から2時間、他のバスが来るのを待つ羽目になった。余裕を持ってスカイトレイルを完歩できる計画にしていて本当に良かったと思った。ちょうどピザ屋があったので、待ち時間を利用して早めのディナーを楽しんだ。この事故のおかげで、他の乗客との会話が楽しめたことも予想外の嬉しいポイントだった。
ようやくBroadfordに到着し、地図を見るとDAY1でいくつかの街を通過しそうだったので、スーパーマーケットもあるだろうと気楽に考えていた。そのため、Broadfordでは夕食と翌日の朝食分だけしか購入しなかった。これが大きな間違いで次のスーパーマーケットスポットはDAY4でたどり着くことになるPortree(ポートリー)までなかった。食べ物を手に入れてハイキングのスタート地点を見つけ、本格的に「スカイトレイル」をスタート! 本当に標識も何もない場所からスタートした。経度も高いスコットランド。4月でも日が長く、9時半くらいまで歩けるくらい日の入りが遅かった。5kmほど歩き早めに良さげなテントスポットを見つけてテントを設営した。

スコットランドのキャンプ事情

キャンプ場ではない森や池の側などで、テントを張って寝ることを「ワイルドキャンピング(Wild Camping)」という。2003年に導入された法律により、スコットランドでは基本的にどこでワイルドキャンプをしてもよい。もちろん誰かの所有地ではNGだが、それ以外であればキャンプ場でなくともテントを張ることが法律的にも許可されている。しかし、絶対にしてはいけないのが火を起こすこと。自然の中で焚き火をしたい気持ちはわかるが、スコットランドでは山火事が起きやすい環境となため絶対にNG。地元民に迷惑をかけない、ゴミは持ち帰る、当たり前のことを守り、スコットランドでの大冒険を楽しもう。
*ヨーロッパでワイルドキャンプが許されているその他の国には、Sweden, Norway, Ireland, Estonia, Latvia and Spainなどがあるようだ。
DAY1:ブロードフォードからエルゴル (Elgol)
眩しい朝焼けとともに目を覚ます。昨夜寝る前にテント近くにいた羊たちはどこかに行ってしまったようだ。テントをたたみ本格的にスカイトレイルをスタート。少し歩くとすぐに海が見えてきた。


広大な海を横にそこまでアップダウンも激しくない道をいく。スカイ島はよく雨がふる島。そんなこともあり、晴れている日でも水たまりが途中にたくさんあった。初日ということで、まだまだ靴は濡れていないので水たまりをさけて歩く。しかしふと足を踏み外し、”ぼちゃん!”と水たまりへ。泥水が靴に染み込み心地悪い。しかし不思議なことに歩いているとこういった心地悪さも次第に過ぎ去っていき、一度汚れたからもういいや、と水たまりを避けることなくまっすぐ歩き抜ける。そうなってくると自然と歩くペースも上がった。1日目ということで足取りも軽かったのだが、それ以上に足取りが軽かったのが、後ろからやってきたランナー。まるでヤギのように軽々とトレイルを駆け抜けるランナー。そんなランナーと数人すれ違った。水や食べ物もなしに犬と一緒に駆け抜けるランナーも。きっとスカイ島に住んでいるとこれが毎日のランニングコースなのかなと想像を膨らませた。

少しお腹が空いてきたが、地図で確認すると次の町までそんなに遠くない。きっと何か食べるところがあるはず。その考えが甘かった。地図に名前がでてくると、最低限のショップやレストランなどがある街と無意識に捉えてしまうのだが、スカイ島ではその考えは通用しない。本当に数えられるくらいの家というか建物しかないの。これでよく町っていえるなあ、と心底思ってしまった。

通過していく町がこんな感じだったので、これはもしかしたら食糧なくなってやばいかも、、と感じ始めた。そんな静かな町をいくつか通りすぎ、トリン(Torrin)という町に到着。そこで見つけた、「Cafe」のサイン。やったーということで、歩くペースが速まる。そこで見つけたのが可愛らしいカフェ「Amy's Place」だ。

陽気なおじさんとおばさんが運営しているカフェ。サンドイッチやスコーン、スープなどが食べれる。スカイ島といえば魚。魚のスープをいただいたがハイキング中に温かいスープが食べれるのは最高だ。アルコールは置いていないのだがなにか冷たいものが飲みたい。そんな時にみつけたのが、スコットランドの炭酸飲料「アイアン・ブルー」だ。
スコットランドの国民的ドリンク「アイアン・ブルー」

オレンジ色の炭酸飲料で缶もオレンジで印象的。「スコットランドは、コカ・コーラがソフトドリンクシェア 1位でない唯一の国」なんて言われるほど、このアイアン・ブルーは国民的ドリンクのようだ。スコットランドで1901年に誕生したようで、同じイギリスのロンドンですら、なかなか見つからないほど入手困難な炭酸飲料だそうだ。シュガーフリーを飲んだが、とても爽やかで後味もそんなに残らず美味しかった。残念ながら日本では輸入していないようだ。
さあカフェで一休みしてお腹もいっぱいに。次いつスーパーマーケットがあるかわからないという不安感からとりあえず2個サンドイッチを購入。よくいえば”ミニマリスト”悪く言えば”ケチ”な私は食べ物をたくさん買い込むことができない、ということをこの旅で知ることになった。カフェをでてカフェの看板に石がぶら下がっていることに気がついた。これがなんともびっくりな石で天気予報ができる発明品なのだ。

直訳すると:
天気の状態
石が濡れているー雨
石が乾いた状態ー雨が降っていない
地面に(石の)影ー晴れ
(石の上に)白ー雪
石が見えないー霧
石がないーハリケーン
笑ってしまった。

このカフェを後に、海岸線沿いを進んでいく。海岸線トレイルの良いところは自分が通ってきたトレイルが海の反対側にみえること。今日あそこから歩き始めたのか〜なんてのが目にみえるので達成感も◎。しっかりと食べ物をBroadfordのスーパーマーケットで貯め買いしなかったので、夜しっかりと食べ物が準備できるか心配だった。そんな中DAY1の目的地としていたエルゴル(Elgor)という静かな村に到着。

レストランやカフェがあることを願って歩を進める。村に住む少年たちが自転車で遊んでいる。どこかレストランある?と聞くと指をさして教えてくれた。Bistroというとてもおしゃれなレストラン。食べ物はもちろん美味しくいただき、スカイ島のビール「Skye Ale」を初めて飲んだ。

長いハイキングを終えたあとということもあり、とても美味しかった。美味しいディナーの後はElgorの村から少し歩いた場所でテントを張って就寝。
DAY2:Bothyを探して
引き続き海外線沿いを歩いていく。朝からシャワーのような雨が降っていた。反対側からスカイ・トレイルを反対側からスタートしたと思われるハイカーがやってきた。「昨夜はどこに泊まった?」と聞くと「Bothy(ボスィー)」という風に答えた。
ボスィー(Bothy) とは?

ボスィー(Bothy) とは、スコットランド中の大自然にある、誰もが無料で泊まれる小屋。ベッドなどはないが、ここでハイカーは自分の寝袋を広げて寝ることができる。ブロックレンガでできたものが多いので、寒い大自然の夜を過ごすには最適だ。毎回多くのハイカーがこのBothyを利用する。場所にもよるが、大きいものだと、10人くらい一度に泊まることができるものもあるようだ。私たちもこのBothyをスコットランドにきたからには使ってみたいと思っていたが、スカイ・トレイルでは2つしか遭遇しなかった。(気が付かなかっただけかもしれない。)
スカイ・トレイルのアイコニックな存在でもあるのが、スカイ島の一番北にある白いBothyだ。

このBothyは部屋が数部屋やり、屋内の壁も白の木製でとてもおしゃれだった。過去にスカイ・トレイルを歩いたハイカーが残したと思われるトランプや本もあった。
このすれ違ったハイカーが泊まったと思われる海外線にぽつんとあるBothyの中を覗いてみると泊まっているハイカーが数名いた。ここから海外線は抜けて山と山の間を歩いていくトレイル。

ここから先20kmくらいは街や道路といったものがない中のトレイル。食べ物もハンバーガー1個ずつしかない。ちょっと不安だった。しかもこの後いつ食べ物に巡りあえるかわからない。そんな中この日は雨がずっと降り続いた。風は強くなかったが、ポンチョを出してひたすら歩き続ける。
印象的だったのがハリーポッターのしゃべる帽子に似た形の山。これを横目に進んでいくのだが、なんとも登りがいがありそう。このような低山がいくつかあったので次回は山も登ってみたい。

空腹が何度がやってきたが、水でお腹をいっぱいにする作戦で凌いだ。ウォーターフィルターボトルがあって本当によかった。
そんなこんなでこのワイルドなエリアを抜け、Sligachanという場所に辿り着く。駐車場やホテルがありそんな中思っていなかった奇跡が。そう、なんとクラフトビールバーがあったのだ。とてもおしゃれなCullin Breweryはスカイ島の美味しい水と作られたクラフトビールが楽しめる。ビールよりも食べ物!といった感じだったのだが、なんとキッチンがちょうど閉まってしまった模様。ウェイターの人にダメ元で聞いてみたら、スカイトレイルを横断中ということに感激してくれたのか、特別にスープを準備してくれた。雨で濡れた体には嬉しいスープ。そしてケーキを6種類くらい2人でいただいた。もちろん美味しいビールも!ビールとケーキでお腹もいっぱいになったところでハイキング再開。ここからも海岸沿いを進んでいく。

ビールとケーキで元気を養い、雨はまだ続いていたが、足は前に進んでいた。地図で確認すると、今日のゴール地点付近にBothyのマークがある。やった、今夜はBothyで寝れるかもしれない。そう期待を胸に、脚を進めていく。地図が指す村にようやく辿り着いた。Bothyとある地図で示されている場所を探して歩き回ると、あったのは普通の民家だった。困り果てて周囲をうろちょろしていると、家から大柄な男性が出てきた。「大丈夫か?」と声をかけてくれた。マップにBothyと書いてあるから探していると伝えると、苦笑いして教えてくれた。どうやらその表記は自分たちの家のことらしい。残念に思っていると、その男性が言った。「よかったら、泊まっていいよ」最初は意味が理解できなかった。Airbnbみたいな話かと思い、「いくらですか?」と聞いたら彼はキョトンとした。違う。お金の話じゃなかった。使っていない別の家があるから、よかったらそこに泊まっていけ、というのだ。
Scottish Hospitality(スコティッシュ・ホスピタリティ)
このスコットランド人の男性は、奥さんに確認を取り、快くOKをもらってくれた。案内された家に入って驚いた。ベッドルームが2〜3個ある、めちゃめちゃ豪華な家だった。壁には義父が集めたという絵画が飾られていて、「靴がびしょびしょだろ、洗濯機使っていいよ」とも言ってくれた。「床で寝るとか言うな。このベッドを使え」とベッドまで使わせてくれた。
スコットランドには「Scottish Hospitality(スコティッシュ・ホスピタリティ)」という言葉があるのだと彼は教えてくれた。旅人を温かく迎えるカルチャーが根付いているのだと。翌朝、鍵を返しに行くと、何事もなかったかのように「次の街まで仕事で行くから乗ってくか?」と言ってくれた。ハイキング中なので、と断って別れたが、本当にこのスカイトレイルの妖精のような存在だった。びちょびちょだった服は全て洗濯でき、シャワーも浴びれた。ふかふかのベッドでぐっすりと睡眠もとれ、天気もよく清々しい朝だった。
DAY3:晴れの朝とトイレの夜

前日の雨が嘘のような青空の中、ポートリー(Portree)に向けて歩き出した。歩いているとパートナーのズボンに鳥のフンがついてしまい、しゃがんで取り除こうとしていたら、近くの家から朝早くにおばあちゃんが出てきた。「大丈夫ですか?」しゃがんでいる私たちを心配してくれたのだ。鳥のフンの話をして笑い合い、後にしたが、スカイ島で会う人すべてが本当に温かかった。
Portree(ポートリー):スカイ島の首都

この日の目的地はスカイ島最大の街Portree(ポートリー)。スカイトレイルを歩く上で、スーパーマーケットがある唯一の中継点だ(もう一つはスタート地点のBroadford)。港沿いにピンク・黄色・薄緑のカラフルな家が並ぶ、フォトジェニックな漁師町。ここまで食料に苦労し続けた私たちは、スーパーマーケットを見つけた瞬間歓喜を上げてしまった。まずはパブでランチ。フィッシャーマンタウンといえばやっぱりフィッシュ&チップス。釣りたての魚を使ったものを食べながら、スカイ島のクラフトビール「Skye Ale」もいただいた。
スーパーマーケットでは普段は買わないお菓子も買い込んだ。155kmの行程、砂糖は時に必要だ。スコットランドの店員さんにおすすめのお菓子を聞くとたくさん教えてくれた。準備万端でポートリーを後にした。

崖の上の強風

ポートリーを出ると今までとはトレイルの様相が変わった。海岸線歩きから、丘の上を歩く行程に切り替わる。最初のうちは耐えられる風だったが、高度が上がるにつれて風が尋常じゃなく強くなった。がけギリギリを歩くルートなのに、吹き飛ばされそうなほどの突風が吹いている。振り返ると、パートナーも必死に踏ん張っている。風の音で声が届かないので、お互いに親指を立てて無事を確認しながら進んだ。
唯一の救いは、追い風だったことだ。
スカイトレイルは南から北、または北から南のどちらから進んでもよい。私たちが南→北を選んだのは、事前に読んだ誰かのブログで「風向き的にこっちがいい」と書いてあったから。半信半疑だったが、まさかこれほど実感することになるとは思わなかった。73kgの私でも危うく飛ばされそうな暴風の中、後ろから押してもらっている感覚で一歩一歩進めた。のんきに崖際の草を食んでいた羊の親子が、妙に頼もしく見えた。

トイレで一夜を過ごす
暴風の丘を越え、 駐車場のあるエリアに降りてきた頃には夕方近くになっていた。体力的には限界に近い。テントを張る場所を探していると、森の先にマップでピン留めされた建物があった。カフェかもしれない。期待を持って進んでみると、それはキャンピングカー旅行者向けの公衆トイレだった。男女別・多目的・赤ちゃんのおむつ替え室。赤ちゃん用のおむつ替え室を開けてみると、広くて、しかも意外なほど清潔だった。二人で顔を見合わせた。カメラもあるし、と最初は躊躇したが、外は台風状態。体力的にも限界。「もうやるしかない」という結論になった。鍵をかけて、マットレスを敷いて、スリーピングバッグを開いた。不思議なことに、アイマスクをして横になったらぐっすり眠れた。朝まで一度もノックされることはなかった。しかし、良い子を真似をしないように。
前夜は、見ず知らずの人のふかふかのベッドで眠った。そして翌日はトイレの中で眠った。旅というのは本当に何が起きるかわからない。
DAY4:最大の難関
トイレで目を覚ました朝も雨が降っていた。気持ちを切り替えて荷物をまとめ歩き出す。この日はスカイトレイル最大の難関となる行程だった。一番登りが多いパートだからだ。
The Old Man of Storr

まず目指したのが、スカイ島を代表する岩「The Old Man of Storr」だ。根元が細く、天に向かって高く伸びる岩柱。遠くからでもそのシルエットは際立っていてスコットランドの写真検索をすれば必ず出てくる景色だ。


Storrを越えた先は、木もほとんどない崖の縁をひたすらアップダウンしていくトレイル。AllTrailsで確認すると、アップダウンが11回ほど繰り返される。雨と霧の中、先が見えない状態で崖の上を歩き続けた。
スカイトレイルには標識がない。今まで歩いてきたハイカーたちの足跡、草むらがわずかに踏み固められたところを見ながら進むしかない。

途中で道に迷いかけた時、反対方向から歩いてきた人がいた。びしょびしょに濡れた、マーベルのドクター・ストレンジのような出で立ちのイギリス人男性。「どうやって道を見つけてる?」と聞くと、「草むらが踏まれているのを見ながら進むしかない。前に数人いる」と言った。普段は混雑した登山道が苦手なほうだが、この孤立した環境では、他に人がいると知るだけで心底ホッとした。「グッドラック」と言い合ってそれぞれの方向に別れた。
誰もいない稜線

羊すら見かけない、高い木もない。風が吹き、遠くまで見渡せる稜線をひたすら自分たちだけで歩く。
映画『The Secret Life of Walter Mitty(ライフ!)』の終盤、エベレストへ向かうシーンがある。あの景色に似ていた。自分達だけがこの世界にいるような、静かで広大な空間の中をただ歩いていた。歩きながら少しずつ天気が回復してきた。

雨が降りやすいと同時に光の変化も速い。予報では一日中雨だったのに、太陽の光が差し込んでくるとテンションが自然と上がった。アップダウンをさらに繰り返し、難関を無事に越えることができた。その日は途中で見つけた湖畔にテントを張って眠った。

DAY5:フィナーレ
翌日、地図で残りを確認すると、このペースなら予定よりも早くゴールできそうだった。最終日は天気も良かった。ゴールに向かう前に少し引き返す形にはなるが、おばあちゃんが一人で営んでいるような小さなお店を見つけて、ビールと食べ物を調達した。天気も良かったので外でビールと食べものを食べて、最後のゴール地点へと向かった。



ゴール:Rubha Hunish(ルバ・フニッシュ)のBothy

スカイ島の最北端、崖の上にある白い小屋。これがスカイトレイルのアイコニックなゴール地点であり、スコットランドで最も美しいBothyのひとつとされるRubha Hunishのbothyだ。写真だけ見るとカフェのようにも見える、白い木製の壁。中には過去にここを訪れたハイカーたちが残したカードゲームや本が置かれている。窓から見える、島の最北端の海岸線の景色は、ここまで歩いてきた人だけが見られるものだった。


ぜひBothyに泊まりたかったが、先客がいたため私たちは近くにテントを張って眠ることにした。ちょうどサンセットも見ることができて、155キロの旅を締めくくるにはこれ以上にない終わり方だった。

おわりに
155km、5泊6日。バスのパンク、食料不足、嵐、見知らぬ人の家での一夜、公衆トイレの一夜、マダニ。そしてその全てを埋め合わせてくれるような、スコットランドの人の温かさと圧倒的な大自然、クラフトビール。スカイトレイルは整備されたルートじゃない。標識もない。だからこそこの旅は忘れられないものになった。初めての横断ハイキングにこれを選んだのは、今となっては最高の判断だったと思っている。
ケガとアクシデントについて
華やかに見えるハイキングの裏側も正直に残しておく。
水ぶくれ(マメ):
両足に大きなマメができた。皮がめくれかけた状態のまま、感染を防ぐためにあえて全部剥がさず、テーピングで保護して歩き続けた。毎晩ウェットティッシュで丁寧に清潔を保った。結果的に悪化することなく、むしろ皮が強くなった感覚があった。
膝の痛み(オスグッド気味):
中学・高校時代にバスケをやっていた影響でオスグッドがある。長い下り坂で膝に痛みが出た。途中の街で「タイガーバーム」を購入し、塗り続けた。シンガポール生まれの定番筋肉痛ケアクリームで、塗った途端にスーッと冷たくなるあの感覚。気のせいかもしれないが、膝の痛みはそれ以上悪化しなかった。
マダニ:
スコットランドのハイキングで避けられない存在がマダニだ。事前にブログで読んでいたが、実際についてしまった。パートナーにも見つかった。
マダニを発見したときの注意点:
薬を塗ったり、ゆっくり触ったりするとマダニが驚き、皮膚の奥に潜ったり、体内に毒素を放出することがある。爪かピンセットで頭部をしっかりつまみ、一気に引き抜くのが基本だ。汗をかきやすい脇の下、膝裏、耳の裏なども確認する必要がある。赤みが長引く場合は必ず医師に相談を。
※上記はあくまで私自身の経験に基づく方法であり、医療アドバイスではありません。
ギア・アプリについて
GPSアプリ「AllTrails」:
このトレイルをクリアするには欠かせなかった。有料オプションでは3Dでルートを振り返ることができ、「あの山はどこから見えたんだろう」と後で確認するのが楽しい。日本の山では「ヤマップ」も使いやすい。
軽量ギア:
湖や川の水をろ過でき、使わないときはポケットに入るくらいコンパクトになるタイプのウォーターフラスクから軽量テントまでスカイ島の大自然では本当に助かったギアは以下のブログ記事で詳しく紹介しているので、そちらを参考にしてほしい。
スカイ島のスカイトレイル、いつかチャレンジしてみたい方のために、少しでも参考になれば嬉しい。
























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