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『アナイアレイション 全滅領域』考察|「意味がわからない」で終わらせたくないSF映画

  • 執筆者の写真: Takuya Sakoda
    Takuya Sakoda
  • 3月10日
  • 読了時間: 4分

更新日:2 日前


Anihilation

 

 久々に2回目を観た『Annihilation(アナイアレイション 全滅領域)』。*「アナイアレーション」とも表記される。初めて観た時よりも、むしろ2回目の方がいろいろと考えさせられた。それ自体がこの映画の特性を表しているような気がする。とにかく抽象的で解釈を視聴者に委ねる系の映画。 観終わった後にモヤが残って、あれはどういうことだったんだろうと頭の片隅に引っかかり続ける。そういう映画が個人的に好きで、これはその筆頭に挙げたい一本だ。ネタバレなしでレビュー。



『Annihilation(アナイアレイション 全滅領域)』はどんな映画?

 監督はアレックス・ガーランド。『Ex Machina(エクス・マキナ)』を撮った人だ。AIと人間の関係を描いたあの作品を観た人なら、このアナイアレイションの雰囲気にも似たものを感じるはずだ。「綺麗に答えを出さない」映画を作る人、というイメージが私の中にある。主演はナタリー・ポートマン。彼女演じるバイオロジストが、他の女性4人とともに、ある謎のエリアへと入っていく話だ。地球に隕石が墜落するところから物語は始まる。ただ、マーベル映画みたいにエイリアンが大軍で攻めてくるわけじゃない。隕石が落ちた国立公園内で、なんかよくわからない不思議な現象が起きている。その「よくわからない」が、ずっと続く。ミリタリー兵の夫もこのエリアから帰還して以来おかしい。真実を求めて主人公がこのエリアに踏み込んでいくのだが、中で起きることも、見えてくるものも、抽象的な表現ばかりで説明がつかない。



「見えない脅威」の怖さ

anihilation

 マーベル映画やよくあるSF作品に出てくる「悪」は、だいたい形がはっきりしている。怪物が来る、エイリアンが攻めてくる、明確な敵がいる。見えているから怖いが、見えているから戦える。アナイアレイションはその逆を行く。何なのかわからない。ウイルスなのか、意志を持った何かなのか、それとも自然現象なのか。その「正体不明」がじわじわと恐怖を積み上げていく。ガーランド監督本人もインタビューで、観客が自分なりの解釈を持てるような映画にしたかったと話していた。ラストシーンも同じで、「結局どっちなんだ」という終わり方をする。彼は本来もっと抽象的なエンディングにしたかったそうだ。



「癌」の比喩として観る

この映画を「癌」の体験の比喩として解釈する見方がある。シマーの内部で起きることは、癌細胞の振る舞いと驚くほど重なる。細胞がコピーを繰り返しながら変異していく、止めることができない、どこから来たのかわからない、本人でさえ自覚が遅れる。主人公レナ自身が生物学者であることも、この解釈を補強する。監督のガーランドは明言を避けているが、原作者のジェフ・ヴァンダーミアが執筆中に妻の癌を経験していたという背景を知ると、この読み方が単なる深読みではないように思えてくる。



「自己破壊」と依存の比喩として観る

もう一つの有力な解釈が「自己破壊衝動」だ。映画の冒頭、チームのメンバーそれぞれが何らかの形で自分を傷つける過去を持っていることが明かされる。シマーへの探索志願は、危険とわかっていながら引き返せない状態、つまりアディクション(依存)の構造と似ている。主人公レナが夫を裏切った過去、そして夫自身がシマーへ向かった動機。「なぜ自分を破壊するのか」という問いが、映画全体を貫くテーマとして浮かび上がる。



どちらの解釈も「正解」ではない

面白いのは、どちらの解釈も「なるほど」と思わせる説得力があるのに、どちらか一方に決めることができない点だ。ガーランド監督はインタビューで「観客が自分の解釈を持てる映画にしたかった」と語っている。ラストシーンの「あの存在」が何を意味するのかも、意図的に宙吊りにされたまま終わる。一つの答えを持ち帰れないからこそ、観た後に誰かと話したくなる。それがこの映画の設計だと思う。



見終わった後に議論したくなる映画

個人的にこういう映画が好きだ。「面白かった」で終わらない映画。見終わった後にモヤが残って、あれはどういうことだったんだろうと頭の片隅に引っかかり続けるタイプの作品。友達と観て、それぞれの解釈を話し合えるような映画。アナイアレイションはまさにそれだった。稀に見るタイプの映画だ。



こんな人におすすめ

Anihilation

 

正直なところ、万人向けではない。ドラマチックな展開や爽快なアクションを期待すると残念に感じるかもしれない。多少怖いシーンもある。びっくり系というよりは、じわじわ気持ち悪くなるタイプの怖さだ。血も出る。ただ、「意味を考えたくなる映画」が好きな人には刺さると思う。観た後に誰かと語りたくなる映画が好きなら、間違いなくおすすめできる。NetflixやAmazon Prime Videoでも観られるのでぜひ。



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