映画『ハッピーニート/Jeff Who Lives at Home』感想|スマホ時代に刺さる「今を生きる」メッセージ
- Takuya Sakoda

- 4月6日
- 読了時間: 5分
更新日:4月10日

忙しく過ぎ去っていく日々をあなたはただ社会の流れを漂うように生きていないだろうか?SNSの危険性に気づき始めた人が増え、社会でもSNS利用制限をかける国も増えてきた。今までの人類史で我々人間が経験したことがない「アルゴリズム」とうまく付き合う方法を模索しているそんな時代に、ぜひ観てほしい映画が「Jeff Who Lives at Home」だ。SNSは全く関係のない作品だが、「いま」を生きることの重要性に気付かさせてくれる隠れた良作のひとつだ。
映画「Jeff Who Lives at Home」のあらすじ
主人公のジェフは30歳のニート。仕事もせず、母親の家の地下室に住んでいる。彼はM・ナイト・シャマランの映画『サイン』に強く影響を受けていて、「ユニバースは自分に運命のサインを送ってくれている」というオブセッションを持っている。映画は一本の間違い電話から始まる。「ケビンどこ?」と相手が言う。ジェフは「ここにはケビンなんていない」と答えるが、相手は「ふざけんな、ケビンを出せ」と怒鳴って電話を切る。ジェフはこれをユニバースからのサインだと確信し、「ケビン」を探し始める。
その日、母親に接着剤を買ってくるよう頼まれ、渋々外に出たジェフは、バスの中でケビンという名前のバスケ選手のユニフォームを着た青年を見つける。そこから彼の一日が動き出す。
同じ時間軸で、兄のパットとその妻のストーリーが並走する。パットは仕事も結婚もしているが、妻とうまくいっていない。さらに、母親にも別のストーリーラインがある. 亡き夫のことを引きずりながら職場で一人働く母親のもとに、ある日、匿名の「崇拝者」からメッセージが届く。この3つのラインが一本の日の中で交差していく。
観る前の期待を裏切られる、いい意味で
ポスターや宣材を見ると、コメディ映画だと思う人がほとんどだと思う。主演は『How I Met Your Mother』ジェイソン・シーゲルと『ハングオーバー』や『The Office』などで知られるエド・ヘルム。コメディ俳優の二人が主演だ。自然と「ドタバタ系のコメディかな」という期待で観に行く。ところが、全然違う。
監督のインタビューによると、最初のスクリーニングでは多くの観客が「最初の45分間、この映画が何の映画なのかわからなかった」という反応だったらしい。コメディを期待してきた人たちには、あのテンポは確かに戸惑いを生む。
そこで監督たちは紹介の仕方を変えた。「この映画は『ジュノ』や『リトル・ミス・サンシャイン』に近い作品です」と。その文脈で観ると、映画の居心地がすっとわかる。インディペンデント映画特有のゆったりしたテンポ。笑えるシーンもあるけれど、根っこはヒューマンドラマだ。
ジェイソン・シーゲルもこの仕事の依頼がきた時、初めて脚本を読んだ第一印象が「(自分にできるかどうか)不安だった。」とインタビューで話していた。彼自身が役者の仕事をしていく中で仕事を受けるかどうかの判断基準を、自分にとってチャレンジングかどうか、にしているそうだ。なので迷わずこの役を引き受けたそうだ。そんな、いつもと違うジェイソン・シーゲルの演技が観れるのも注目ポイント。
最後の4分の1で、一気にテンポが変わる
この映画の構造として、前半の4分の3はかなりゆっくり進む。
主人公のジェフがぎこちない動作や仕草で予期せぬ場面に巻き込まれていく。兄との再会、妻の浮気現場の目撃。笑えるシーンもあれば、じわっとくるシーンもある。
そして最後の4分の1で、突然ある事故が起きる。
このペースの変化が本当にリアルで、鳥肌が立った。事故というのは本当に急に来る。ゆっくりとした日常の中に、突然何かが起きる。その緊迫感の変化が映画のテンポと見事にシンクロしていた。
ネタバレはしないが、このラストシーンのために見る価値がある。
この映画が言いたいこと
「運命を信じよう」という映画ではないと思っている。
どちらかというと、「今、目の前で起きていることに注意を払おう」というメッセージだと感じた。
兄のパットが妻とうまくいかない理由は、彼が「クソ野郎」だからではない。車を買いたい、家を買おうという将来のことばかりを考えていて、目の前にいる妻の話を全然聞いていないからだ。妻は彼が嫌いなのではなく、話が通じないことに疲れている。
一方のジェフは、サインを探しているせいで常に周りに目を向けている。バスの中で見知らぬ人を観察し、道を歩いていてもトラックを目で追う。運命があるかどうかは関係なく、「今この瞬間」に意識を向け続けている。
スマートフォンを見ながら歩く人が溢れる今の時代に、この映画のメッセージはかえってよく刺さる気がした。
好きなセリフ
映画の冒頭、ジェフのモノローグから始まる。
この宇宙では、すべてのものとすべての人がつながっている. 心を純粋に保てば、サインが見えてくる. そのサインに従えば、自分の運命がもっと明らかになる。
映画はある「接着剤」から始まり、同じ「接着剤」で終わる。このセリフが最初と最後でちゃんと回収される。その構造の綺麗さも、この映画が好きな理由の一つだ。
もう一つ印象に残ったのが、ジェフが兄に向かって言うセリフ。
なんでそんな生き方をするんだ. この人生がどれほど特別か気づきもせず、お前はただ漂っているだけだ。
これが説教くさく聞こえないのは、言っているジェフ自身がニートで、社会的には「漂っている」側だからだと思う。だからこそ刺さる。
映画『Jeff Who Lives at Home(ハッピーニート)』:こんな人におすすめ
『ジュノ』『リトル・ミス・サンシャイン』が好きな人
静かに、でも確かに心に残る映画が好きな人
コメディ俳優の別の顔が見たい人
プライムビデオでレンタル可能(500円前後)。1時間半ほどの作品.
邦題のせいで損をしている映画だと思う。「ハッピーニート」でも「落ちこぼれ兄弟」でもなく、原題の Jeff Who Lives at Home という静かなタイトルのままで公開してほしかった。
























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