
心が落ち着いていて平穏な気持ちでいられる時間は1日のうちどのくらいあるだろうか?明日のミーティングのことを心配したり、今朝インスタグラムに投稿した写真への反応が気になったり、帰宅途中にぶつかってきた人に怒りを感じたり、、、そんなことをする必要がない平穏な心の静けさ。
この"Stillness"(静けさ)を理解して身につけれることがハピネスへの鍵ではないのか?
「Ego is The Enemy」の著者Ryan Holidayさんの「Stillness is The Key」から私が学んだことをブログにまとめてみました。
目次:
”静けさ”がなぜ重要なのか?
1962年、アメリカ大統領ジョン・F・ケネディはソビエド連邦がキューバからミサイル発射の準備をしていることを知る。早急に攻撃するなどのアクションを起こさなければ、アメリカが滅んでしまう、世界中がパニックに陥りました。後に「キューバ危機」と言われる出来事です。
多くの政治家がケネディに迫ってきます。
アドバイザーの意見は「いますぐにミサイル基地を攻撃するべきだ。一刻一秒を争う。」
そんな中ケネディがとった行動は、ホワイトハウスの庭を歩きじっくりと考える、というものだった。
13日間の緊迫した状態が続きましたが、結果的に核戦争が起こることはありませんでした。
ケネディの "静けさ” がこのシチュエーションを救ったのです。
人間の歴史をみても、このように”静けさ”が多くの人を救ってきた例がたくさんあります。
流れが激しい川の中で、どっしりとじっと動かずにいる岩ような、そんな”静けさ”が私たちの幸せへの鍵であると、「Stillness is the Key」の著者Ryan Holidayさんはいいます。
イメージしてみてください。
あなたが家族と一緒にいてリラックスしている時間。
じーーーと何も喋らずにいてみてください。
すると5秒もしないうちに、「大丈夫?」「何かあったと?」
と心配されるはずです。
じーーっとするという行動は簡単なはずなのに、なぜここまで難しいこと、普通ではないことになってしまったのでしょうか?
365日いつでも電話やメールで他者があなたにリーチできる。
ポケットにあるスマホを開けば簡単にドーパミンラッシュを得ることができる。
街を歩けば新しいシューズやバッグの宣伝があなたに物欲を起こさせる。
嫌でも自分を他者と比べてしまう世界。
そんな現代を生きていく私たちにとって、この”静けさ”がどのように幸せへの鍵となるのでしょうか?
私が考える”静けさ”の魅力
仕事面
家で働くリモートワーカーの私は、様々な方法を使ってパソコンでの仕事に集中できるようにしています。
例えば、疲れてきた時はアップテンポな音楽を大音量で聴きながら行ってみたり、
コーヒーなどのカフェインを飲んでみたり、
いつもと違うテーブルに移動してみたり、
立って仕事をしてみたり。
これらの方法は全てうまくいきます。
しかし、問題は長続きしないことです。
きっとドーパミンラッシュでしょうか?行い初めて時間が経つとそのブーストが切れてしまうのです。
これと反対なのが、音楽もかけずにじーっと椅子に座って淡々とパソコンに向かって仕事をしている状態。”静けさ”です。
振り替えってみると、一番多くの仕事をこなすことができた時というのは、この”静けさ”の状態にいた時がほとんどです。
さらに、仕事をこなすことができたという生産性だけではなく、「満足感=幸せ」を感じることができるのもこの”静けさ”の状態にいた時がほとんどです。
もしかすると、「フロー」の状態なのかもしれません。
*フローについては過去のブログ「WHY I HIKE」にて説明しています。
私が考えるに、この”静けさ”の状態がデフォルトになると、本当に最強なのではないかと考えています。イメージとしては、川の流れにも流されない、どっしりとした岩。
外部からのシグナルや情報に反応しない。
悪く言えばロボットのようにみえることができませんが、1日8時間という可能な時間内淡々と働く”静けさ”を身につけることができれば、
それ以外の時間、目一杯好きなことができるはずです。
心の平穏
「Your thoughts create your reality.」とよく言われます。
同じ環境に住んでいる人でも、住んでいる世界が違うことがよくあります。
友達とハイキングをしていた時の話。
急に雨が強くなってきて、私は「うわー雨だ、、最悪」といってしまいました。
しかし、一緒にハイキングをしていた友人は嬉しそうにジャッケットも着ずに笑っていました。
雨に濡れながらハイキングをするのが楽しい!と喜んでいました。
始めは、「何言ってるんだ!」と思ってしまったのですが、騙されたと思って楽しんでいるふりをしてみました。
すると不思議なことに、嫌なことでもなんでもなくなってきました。
雨が地面や木に落ちる音がどこかリラックシングにも聴こえてきました。
この本では、この”静けさ”を身につけるためにできることを、大きく3つのドメインに分けて説明されています。
Mind (メンタル)
Spirit (イモーション)
Physical (ボディ)
Mind
マインドを空っぽにする
冒頭のキューバ危機時のケネディの話に戻りますが、彼がこんなストレスがかかったシチュエーションをどのようにして”静けさ”を保っていったのでしょうか?
この時期のケネディのオフィスから見つかったのは、白い一枚の紙です。
その紙には
missile, missile, missile
consensus, consensus, consensus
とケネディがひたすらなぐり書きされた後がありました。
よく「Morning pages」と呼ばれるエクササイズです。
毎朝1日を始める前に、机にペンと紙を持って、ひたすら頭に浮かんでくることを文字として紙に書き出します。
誰かに見えるわけでもないので、全く意味不明でもいいのです。
文章になってなくてもいい。とにかく頭の中になる考えや思いを紙に殴り書きをして、
マインドを空っぽにするのです。
私自身も行っているエクササイズで
その時々に考えていることや雑念を書き出します。
悩みや気にしていることをとても雑な文字で書いていますが、
書き終わるころには、前向きな姿勢になっていたり、書いている途中に解決策が見つかってきたり、
思っている以上に効果があります。
朝一に行う人もいれば、夜寝る前に行う人もいるみたいです。
Become Present 今を生きる
”Yesterday's the past, tomorrow's the future, but today is a gift. That's why it's called the present." - Bil Keane
ハイキングをしている時にスマホで友達やパートナーとビデオ電話をしながら歩いている人を見かけたことがあります。
「こんなに広大な自然に囲まれた環境に来ているのに、なぜ?」と感じてしまう人がほとんどかと思います。
では、次のシチュエーションはどうでしょう?
久々に友達と会って話をしているのに、スマホに通知がきたのでインスタグラムを開いてしまい、そこから友達の会話に全く集中できなくなってしまった。
誰でも経験がしたことはあることではないでしょうか?
これらの2つのシチュエーションは基本的に同じことで、mindが"present(現在)"から離れていってしまっています。
新しい環境に移ったり、新しい仕事を始めたりすると、過去の写真をみながら、「あの頃はよかったな〜」と思い出に浸ることがあります。
これは一見普通に聞こえるかもしれませんが、現在、自分の前に拡がる大きな機会に盲目になってしまう危険性があります。人間は過去を美化する傾向にあるためなおさらです。
または、新しい家に慣れ始め、雑誌やインターネットでまた新たな魅力的な家をみると「今度はこの家が欲しい」とmoreを欲してしまいます。
そんな時は、今のこの家(present)も過去自分がとっても欲しかったものなんだ、ということを自分にリマインドしましょう。
では、”present" を生きるようにするためにできることは?
一番簡単であり、難しい方法が瞑想です。
無になり自分の呼吸や自分の思考を第3者になったつもりで観察する。
それ以外には、何か他のことを考える余裕さえ与えない、チャレンジングなことに挑戦するのもいいかもしれません。
Vlog創始者のYouTuberのCasey Nesitatはポッドキャスト「Steve-O's Wild Ride! EP #54」にゲスト出演した時にハードワーカーであったNY時代と、
家族や友達との時間を大切にするようになったLA時代の違いを赤裸々に話していました。
NYに住んでいた頃、彼の全ての行動の基準は「Vlogに使えるネタになるかどうか」でした。
なので、友達に誘われても、「このシーン使えるかな?使えないから断る」という思考だったそうです。
そんなハードワーカーな暮らしでは妻や子供との関係など、本当に自分に必要なことに支障がでる、と気づき、LAに移りました。
LAで何をして過ごしているかという質問に対し、「サーフィン」との答え、
「サーフィンをしながらカメラを抱えるのは物理的に無理なので、気兼ねなく楽しめる」
とジョークまじりに話していました。
当たり前のようですけど、サーフィンのようにpresentに全集中を嫌でも要するアクティビティを頻繁に行っていくのも良い方法だと思いました。
*その後2022年9月にCaseyは家族とNYに戻ることを発表しました。カリフォルニアが好きでなかった訳ではなく、20年間過ごしたNYという街を恋しくなったそうです。それはCaseyだけではなく妻も同じ考えだそうです。インタビューの中でも、戻る決意をした理由を簡単に答えると”Work”というように答えています。
Vlogという形のWorkに虜になり家族や友達との関係を犠牲にしてしまった経験のあるCaseyが、今回はどのようにバランスを保っていくのかも個人的に気になりました。
私自身の考えとしては、何事も「足らずを知らずに足るを知ることはできない」というアイデアに賛成です。
一度も空腹を経験したことがない人は、満腹を本当に知ることはできないし、
寒い冬を経験したことがない人は、温かい気候で暮らせる喜びが分からない。
同じようにCaseyのように失敗や経験をして、周りの人からどうみられるかや批判を恐れずに、自分の本心にしっかり耳を傾けて行動を起こすことも重要なのではないかと考えました。
Spirit
自分独自の道徳的規範を持つ
ルールと聞くと、どこか束縛するイメージがあり自由が奪われるマイナスなイメージを持ってしまいがちです。
しかし、道徳的規範を持たない生き方をすることは、何が正しいのか悪いか、その判断の基準を持たずに生きることになります。
ちょっとずるをして儲ける話や、人に嘘をついて自分が得するような話が自分にやってくる度に、どうしようか迷うはめになります。
例えてみると、誘惑の奴隷と化しているのです。
そもそも何が良くて悪いのか、その基準となる規範がなければ、全てのことに無意味に感じてしまいます。
お年寄りに電車で席を譲ることも、”他者に親切である”という規範がなければ無意味。
牛乳パックのリサイクルに協力することも、”環境にやさしくある”という規範がなければ無意味。
日本では、小学校で道徳の授業があり、この人としての道徳的規範が浸透しているからかと思います。レジの列で割り込みをしてくる人も少ないですよね。
あなたの道徳的規範を改めて考えてみましょう。
私は「常に誠実であること」「人に親切であること」「ポジティブでいること」です。
この規範があるので、財布を拾ったら迷わず交番に届けますし、例え傷つけてしまうことでも迷わず正直に答えます。毎回毎回そわそわすることなく、行動を起こします。
”静けさ”を身に付けたいなら、道徳的規範を持つことが必要です。
この道徳的規範を、皆の前で公表してしまうことで、自分の行動で悩むことがさらに少なくなるのかな?または人生がもっとシンプルになるのかな?と仮説を立てました。
例えば、
「午後6時以降は家族の時間なのでメールは返しません」
「メッセージは即返信はできません」
「体が一番の資本なので、睡眠と運動が一番のプライオリティです」
など?
そうすることで、他者に規範に反したことを期待させることもなくなる?
足るを知る
「Catch 22」の著者であるJoseph Hellerとその友人の著者のKurt Vonnegutがある大富豪が開いたパーティーに来ていた時のことです。
KurtがJosephにこのように質問をしました。
「このパーティーのホストは1日で、君の1番の成功作であるCatch 22の累計の売り上げを軽々と超えてしまう売り上げを作ってしまったようだが、それについてどう思う?」
Josephは「確かにそうだが、僕は彼が一生涯かけて手に入れることができないものを持っている。__足るを知るということだ。」
ENOUGH.
「最新のアイホンを手に入れたら幸せになれるはず」
「ハワイに移住すれば幸せになれるはず」
「部長になったら幸せになれるはず」
「もっと綺麗な彼女ができたら幸せになれるはず」
最近ピクサーの「Soul 日本語版:ソウルフル・ワールド」という映画を観ました。
とても深いメッセージが込められたお勧めの作品です。
夢見る音楽教師のジョーは小さな頃からプロのジャズミュージシャンになることを夢見ていました。
映画は、生まれる前の魂(ソウル)達の世界と私たちの世界を舞台に進んでいきます。
作中、プロのジャズミュージシャンになることがJoeにとってどれだけ大切で重要なことなのかが描かれています。。これなしだったら生きていく意味がない。とまで断言していました。
映画後半で、やっとの思いでジョーは念願のプロミュージシャンとしての舞台に立つことができます。
演奏が終わったあと、観客はスタンディングオベーションで大成功に終わります。
ショーが終わった後、最後にジャズバーを出るJoe。どこか困惑した表情をしています。
「So...What's now? 」と彼をプロジャズバンドに招待してくれた有名ミュージシャンに聞くJoe.
「また同じパフォーマンスを明日も、その次も繰り返すだけだよ」との返事。
ー
どんな人も「これを成し遂げれば絶対に幸せになれる!」という出来事が終わったあとの
想像とかけ離れた虚しさを感じた経験があるのではないでしょうか?
「Soul」の作中でも後にJoeが気づくように
カフェから出た時に季節の移り変わりにうっとりしたり
床屋のおじちゃんとおしゃべりしたり
成功・失敗・ドキドキすること・悲しいこと
自分が既に持っている日常の些細なことを経験し心から感じること
これこそが幸せに生きるために必要な姿勢なのかもしれません。
逆を言うと
〇〇さえあれば幸せになれる
〇〇になればきっと幸せになれる
といった考えは、あなたをそのこと以外のことに対して盲目にさせてしまう危険があります。
足るを知る。
今自分が持っていることに満足する・感謝する姿勢を身につけていきたいですね。
PHYSICAL
いらないものはもたない
あなたが仕事を頑張ってきた甲斐が報われ、昇進し給料がアップすることになりました。
一人暮らしのあなたはお金に余裕ができることになるので、親友の家のようにちょっと大きなアパートに引っ越すことに決めました。
今までは1Kに住んでいましたが、1LDKへランクアップ!
余分に部屋一つ増えたので、ソファーやテーブル、音楽スピーカーなど家具を購入しました。
とてもワクワクして住み始めたのですが、住み始めて数ヶ月後あることに気づきました。
ソファーがある新しい部屋はほとんど使わない、そのくせ掃除機はかけないといけない。
前回の狭いアパートより、エアコンでアパート全体が涼しくなるのに時間がかかる。
しまいには新しく買ったスピーカーが壊れてしまい、その修理をするためにスピーカーを店頭まで持っていかないといけない。
などなど、アップグレードをしたはずなのに、返って自分の人生が惨めになっていたのです。
このような経験を誰しもがしたことがあるのではないでしょうか?
More money, more problems.
More stuff, less freedom.
古代ローマの哲学者セナカの言葉に
「The slave owners owned by their slaves. (奴隷所有者は奴隷たちに所有されている。)
というものがあります。
新しい家を買うために、あなたが2つ目の仕事も始めないといけないのであれば、本当にあなたが新しい家を所有していることになるのでしょうか?
毎朝犬を散歩に連れていって、餌を与えて、トリマーへ連れていって、
果たして飼われているのは犬なのか、人間なのか?
おばあさんがあなたにくれたペンダント。
おばあさんはあなたにびくびく無くさないかなといつも心配で不安で残りの人生を過ごしてほしくてあげたつもりではないのではないでしょうか?
旅行先で撮った写真が見つからなくなって、友達をせめるあなた。
思い出は自分の中に記憶として残っている、これだけで充分なのではないでしょうか?
物理的な”もの”だけではなく
仕事や会社のサイズも必要以上に大きくしないことが
満足がいく持続可能なビジネスではないのか?ということを説明している「Company of One」という本も似ている考えです。
サイズアップが必ずしも正しいわけではない。
社員が増えることで、自分への責任が増えたり、教育に時間がかかったり、税金が増えたり、その他の問題がでてきたり。
もし今の仕事と今の収入で普通に生活できているのなら、なぜサイズアップする必要があるのか?
そんな考えに基づいた本です。
我々は皆自由で産まれたきたはずなのに
メディアや周りの影響、社会的プレッシャーから「自分の心地よい度」がどんどんと変わっていってしまうことも怖いポイントです。
例えば、掃除機ロボットルンバを買って使い始めると、ルンバなしの生活なんて考えられませんよね?
周りの影響や突破的な欲求でものを購入し、自分の自由を失うことを避けるよう気をつけたいものですね。
散歩
どんな場所にいて、どんな暮らしをしていても行うことができる「静けさ」に近づくことができる行動が散歩です。
カロリーを燃やすとか、〇〇キロ歩くなど、そんな目標やゴールを持たずにただただ歩く。
スマホも持たず、音楽も聞かずに足を進める。
頭も中を空っぽにする必要はありません。いろんな考えが浮かんできていいのです。
いろんな考え浮かんでいることを受け止めます。
たまにはいつもと違う道を歩いてみて、新しい発見があったり。
いつも通っている道に、綺麗な花を見つけてみたり。
この道を1,000年前はどんな人が歩いていたんだろうと妄想してみたり。
そんな散歩はある意味でお金のかからない贅沢かもしれません。
スマホのおかげで、どこにいても24時間外部とつながっていることが当たり前となった世界。
なかなか自分と向き合う時間をとることが難しくなってきました。
そんな時代だからこそ、散歩は外部からの連絡を経ち
自分と向き合う時間を作ることができる良い方法でもあります。
また歴史上の著名人をみてみても散歩愛好家が多いのも、偶然ではないはずです。
スティーブ・ジョブズ、アルバード・アインシュタイン、チャールズ・ダーウィン、イエス・キリスト、などなど。
一歩一歩体を動かす。この動きの繰り返しが脳への血液の循環を良くしてくれ、アイデアのひらめきへと導きます。
この散歩という贅沢を1日に少しでもいいので、自分に与えてみませんか?
まだまだこのブログではカバーできなかった内容も「Stillness is the Key」にはたくさんあります。
また人それぞれ響く部分も違うはずですし、同じ人でも時期が違うと響く部分も変わってくるはず。
きっとこれから10年、20年経った後でも、読み返すとまた新たな発見をくれそうなそんな本です。
ぜひ気になる方は自分でも読んでみてください。