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Peak Performance - 最強の成長術

更新日:2023年5月12日



日本はこれまで世界に誇れるものを多く輩出してきました。ところが誇ることができないものも中にはあります。その一つがKaroshi(過労死)です。最もよく使われる英語の辞書 the Oxford English Dictionaryにも2002年に追加されました。


毎年日本では10,000人が過労死しているといわれています。満員電車1両が300人と言われているので、満員電車33両分以上の人が死んでいることになります。


残念なことに過労死の被害者は日本に止まることなく、世界的に大きな問題となっています。2016年には745,000が過労死したと、WHOが発表しています。


仕事や運動でバーンアウト(燃え尽きる)せず成長し続けるにはどうすればいいのか?


そんな課題の答えを求めていったの、元ビジネスマンと元スポーツアスリートが書いた本が「Peak Performance(日本語名:最強の成長術


このブログはこの本を読んで私が学んだことをシェアします。



目次:




ストレス + リカバリー = 成長

 

「よく働きよく遊べ!」と良く言われますが、よく休むことを始めるべきかもしれません。


筋トレを例にとってみても、実際に筋肉が成長をしているは、ダンベルをあげている時ではなく、その後に休んでいる時です。


休養が大事なことは言われなくても分かっているよ!と感じる人がほとんどでしょう。


しかし、なぜ休養は難しいのか?


それは身体的な休養ができていてもメンタル的な休養ができていない人がほとんどだからです。


なぜメンタル的な休養が必要なのか。



ある面白い実験があります。


1990年台半ば、社会精神学者のRoy Baumeisterさんは、なぜ人は難しい問題を解いた後に疲れるのか、興味を持ち始めました。


67人の成人を1つの部屋に集め、美味しそうな出来立てのクッキーの香りを匂わせました。


その後、半分はクッキーを食べることを許可し、残り半分は我慢して代わりに美味しくない大根を食べさせました。


食べ終わった後に、解けそうに見えるけど解くことが現実的に不可能な問題を解けせました。


大根を食べたグループは19回トライして、8分で諦めた。

クッキーを食べたグループは33回トライして、20分続いた。


という結果になったそうです。



この研究からもわかるように、私たちの脳にとってはエナジーには身体的・メンタル的の区分がないことになります。



自分では休養をしているはずでも、実はメンタル的にエナジーを消費している行動をおこなっている可能性があると思いませんか?





ストレス

 

筋トレで筋肉に負荷(ストレス)をかかかると、次回同じ負荷がかかっても大丈夫なように筋肉が強く成長する。これは誰しもが理論的には理解できていることかと思います。


実は数学やチェス、あるいはプレゼンテーションをするなど、身体的ではないスキルも、ストレスが必要不可欠なのです。


ある研究では、生徒を二つのグループに分けて難しい問題を解かせてところ、すぐに先生からの助けを得たグループに比べ、助けを全く得られなかったグループの方がパフォーマンスが良くなった、という結果がでています。


ではどのくらいのストレスが成長には丁度いいのか?


manageable stress - ぎりぎり対応できるくらいのストレス


が成長には必要不可欠というふうに言われています。


時間の経過を忘れるくらいある行動に集中している精神状態を「Flow (フロー)」といいます。


実はこのフローの状態に入るにも、ぎりぎり対応できるくらいのストレスが条件とも言われています。


簡単すぎず、かつ難しすぎない。



脳のシステム1とシステム2


私たちの脳のシステムには大きく分けて二つあると言われています。本「Thinking Fast and Slow (日本語版:ファスト&スロー:あなたの意志はどう決まるのか?)で紹介されたコンセプトです。


システム1:

  • 何も考えずにオートパイロットできる行動や直感・反応 

  • エネルギーをあまり消費しない省エネモード

  • 例、利き手で歯を磨く、3+2=に答える


システム2:

  • 集中を要する行動や判断 

  • エネルギーを消費する

  • 例、利き手でない方でドリブルする、難しい問題を解くなど


もちろん成長に必要なストレスはあなたの脳がシステム2を使っている時です。


1日の中でどのくらいシステム2を使う行動をしていますか?


システム2を日頃から使う時間を意識的に設けることで、脳の神経系を鍛えることができます。





ストレス・失敗をポジティブにとらえる


ストレスは成長に必要不可欠なことである以外にも


「ストレスの秘密」で学んだように、ストレスは私たちに多くの利益をもたらしてくれます。


しかし、これもあなたがストレスをポジティブに捉えるかどうかで大きく変わってくるようです。


今後はプレゼンで失敗をしても、「生産性のある失敗」と考えるようにしましょう。






マルチタスキングを避ける


マルチタスキングができる、と聞くととても生産性がある人のように聞こえますが


そもそもマルチタスキングは存在しないようです。


私たちの脳は一度に一つのことに行うようにしか作られていません。


「いやいや私はミーティングに参加しながら、写真の編集もできるよ!」


と感じる人もいるかもしれませんが、実はこれは10分の1秒という自分でも気づくことのできない素早さでタスクA(ミーティング)からB(写真編集)へとフォーカスをいったりきたり移し替えているだけなのです。


例えるとスポットライトを当てる対象を瞬時に入れて変えているイメージです。


それ以外にも、マルチタスキングをしているとフローの状態に入りづらかったり


注意残余 attention residue」といって別のタスクに取り掛かる時に、前のタスクに、注意力が残ってしまい、注意力はしばらく分裂してしまうことが起きてしまうからです。


ある研究では、マルチタスカーは情報処理能力が低下するだけでなく、長期的記憶力も低下するという結果も出ているそうです。


「Peak Performance」の中で、印象に残っているストーリーが、とても成功をしているベンチャーキャピタリスト Dr. Bob Kocherさんの話です。


仕事がとても忙しいだけでなく、子供もいる、そんなBobさんがなぜ多くの業績を残すことができたのか、


その秘密を探るために、著者がBobさんにインタビューをした時の話です。


Bobさんは「1日をタスクごとにスケジュールし、その時間にスケジュールしたタスクやアクティビティに自分の全ての集中を注ぐこと」と答えました。


著者は「まるで彼がアメリカの総理大臣と話をする時のように、自分たちに全集中を傾けてくれた」と書いていました。



マルチタスキングを避けるために、私自身が取り入れてよかったと思うことは


「タイムボクシング」です。


タイムボクシングに関しては、ぜひこちらのブログより読んでみてください。





ストレスへの反応をコントロールする


 これは事項のリカバリーにも関係することなのですが、そもそも多大なストレスが自分の体や脳に起こる悪影響をコントロールできるとしたらいいと思いませんか?


実はコントロール可能なのです。


この説明をするのに重要なのが、脳の部位2つです。


Prefrontal Cortex(前頭前皮質)とAmygdala(扁桃体)です。



前頭前皮質は、人間の脳で最も発達している部位で人間を他の動物から差別かできる部位。


ストレス反応を抑制したり、個々の性格の発達、決断を下すのもこの部位です。


簡単にいうと、思考をつかさどります。



Amygdalaは、脳の中で最も発達が劣っている部位でマウスなどの動物の脳にもある部位。


感情を司る部位で、ストレス反応を引き起こすのもこのAmygdalaなのです。



ストレスによる悪影響起きる時は、このAmygdalaが脳をハイジャックした状態です。


身体中の至るところにストレスによる悪反応を起こさせます。




しかし、前頭前皮質を鍛えることで、Amygdalaが脳をハイジャックすることが防げるようになります。


その代表的なトレーニング方法が、瞑想・マインドフルネスです。



Wisconsin Medicineが行った実験では、瞑想上級者と瞑想未経験者にとても熱いワイヤーを脚に近づけてその反応を観察しました。


「あつっ」という反応は一緒だったのですが、その後の反応は全く違うものとなりました。


fMRIを使って観察すると、残りの時間、未経験者のAmygdalaが活発な状態のままになっていることが観察できました。


しかし、経験者の脳は最初の「あつっ!」でAmygdalaの活動が収まったのです。


まるで、脳が痛みという感覚を感じるのことを選ばなかったように。



実はこういった効果は、瞑想上級者以外にも、エリートランナーでも観察できることのようです。


とても激しいトレーニングをしていていも、「このトレーニングで痛みや疲れをきっと感じるけど、大丈夫。それは当たり前のことだ。と自分の脳を説得したような状態です。


エリートランナーの場合は瞑想で前頭前皮質を鍛えたというよりは、前集中を要する質のいい練習を定期的に繰り返すことで、これが可能になったのではないかと言われています。





リカバリー

 

ほとんどの人がリカバリー(休養)の重要性を理解しているかと思います。


どのような方法で体や脳のリカバリーをしていますか?きっと多くの人が、


仕事の休憩時間中や休みの日に、インスタグラムのフィードを見あさったり、無心にユーチューブビデオを観たりしてリカバリーしているつもりになっているかもしれません。



その反対が、脳の「DMN (デフォルトモードネットワーク)」です。(*こちらのブログ THE JOY OF MOVEMENTで詳しく説明しています。)


シャワーを浴びたり、散歩をしたり、ぼーっとしている時にアクティブになる脳の神経活動です。


実はDMN常にアクティブなのですが、数学の問題を解いたり、何かに集中すると考える神経系が脳を独占するために、存在が薄まります。


DMNの利点は、脳の中にある全ての情報に自由にアクセスできたり、情報の整理ができる、というポイントです。


机に座ってじ〜っと新しいプロジェクトの案を生み出そうとしてなかなか生まれないが、シャワーを浴びてる時にはっといいアイデアが浮かぶのもこのDMNのおかげです。


DMNが活性化しすぎることで、ネガティヴ思考に陥ったり、自分の世界に閉じこもってしまう、という欠点もあります。


しかし、現代人の問題はこのDMNが独占している時が少なすぎることです。


次から次へと流れ込んでくる情報やエンターテイメントで、脳がDMNに浸る余裕がないのです。


おすすめのルーティンとしては、50分作業をした後は、8分〜15分の休憩をいれることです。この時に、DMNに浸ることができるよう、散歩にいったり、立って外の景色を長めたり、洗濯物を畳んだりするようにしましょう。


要するに集中力を必要としないアクティビティです。






やりがい

 

バーンアウトせずに継続的に良いパフォーマンスを維持し成長し続けるためには、ストレスとリカバリー意外にも注目すべきポイントがあります。


それがやりがいです。生きがいと同様に世界的にも注目されるようになった日本の概念です。


特に、他の誰かや社会・動物・自然のためなど、自分を超えた何かのためにやりがい(目的)を持つことが鍵となります。


長期休暇というのが、これまでのリカバリーの王道だったかと思います。しかし何ヶ月も休暇を得ることが現実的に難しいパターンが多いです。


そんな時に、やりがり・自分を超越した目的をもつことで、同じような効果を得ることができるかもしれません。




私たちの脳は、恥ずかしい経験や怪我、痛みから私たちを守ろうとします。痛みや疲れ・心配な気持ちになったりするのは、脳がそのように仕向けているだけなのです。


つまりは、筋肉の痛みを感じていたとしても、それは脳が作り出したこと、ということです。


この脳のプログラミングを、やりがいを持つことで書き換えることができるのです。



アメリカのアリゾナでびっくりするようなことが起きました。


ウェイトリフターでもない一般的なアメリカ人男性のTomさんは、18歳の青年が車の下敷きになっているのを発見しました。


それを見たTomさんは、すぐさま車の端を素手で持ち上げ青年を救出したのです。


”この青年を救いたい”この自分を超越した何かのために、という目的からオリンピックのウェイトリフティングの記録を更新する重さを持ち上げてしまったのです。



では実際にこのやりがい・自分を超越した目的をもつことをどう仕事に活かすことができるのでしょうか?



Give back to get back


 私がNZのホテルでレセプショニストとして働いていた時のことです。


働き始めの頃は、覚えることも多く、毎日多くのゲストと対応することができ、楽しんで仕事をしていました。


ところが、2年目に入るとそのフレッシュさもなくなり、同じ業務の繰り返しに飽きてしまいました。


そんな時に、新しいスタッフのトレーニングを任されることになりました。


まだ何も知らない新スタッフに、どうしたらうまく伝えることができるだろうか?


常に考えるようになりました。慣れてしまい、すこし雑になっていた業務も、新スタッフに教える身なのでしっかりしなきゃと、気が引き締まりました。


他の古株スタッフからも教育を受けていた彼女が、「Tak(私)からのトレーニングが一番わかりやすい」と言ってくれたことがとても嬉しかったと覚えています。


そんなこともあり、仕事に行くのがまた楽しみになるようになりました。



もしあなたの部下が仕事になれてきて、モチベーションを失っているように感じてしまったら、あえて誰かのメンターにしてあげるのも良い手段かもしれません。


そのgive back する内容は、メンターやコーチングなど大掛かりなものである必要はありません。


インターネットの掲示板にアドバイスを投稿したり、その程度でもいいのです。




目に見えるところに"やりがい"を感じるリマンダーを置く


 はたまたホテルで働いていた時の話ですが、レセプションの業務の中でもつい嫌になっちゃうのが、同じ質問に何度も何度も答えなければいけない、ということです。


電話での予約応対もしていたのですが、基本的にみんな同じ質問をしてきます。


働いてる側としては、「そんなのウェブサイトに書いとるやん!」とイラっとして答えてしまうことがあります。特に忙しい時なんかは。


そんな時に役にたつのが、ゲストからの心のこもったレビューやお手紙です。


「人生で一番思い出に残るステイになりました。ありがとう!」


「期待通りの素晴らしい結婚記念日になった!」


「ずっと来たかったマウントクックにやっとこれて感激。」


このようなコメントを常に自分のみえるところにおいておくことで、


「自分はただ質問に答えているだけじゃない。ゲストの一生の思い出を作っているんだ!」


とリマインドをすることができます。


そうすることで、つい雑になってしまう業務でもやりがいを感じて行うことができるのです。



同じようなアイデアが、単調に聞こえてしまう仕事のタイトル、例えばハウスキーパーなどを別の呼び方で呼んだりすることがあります。


スタバなんかも、スタッフではなくパートナーと呼びますよね。

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