『ウィッチャー3 ワイルドハント』感想|ポーランド在住の非ゲーマーが小説きっかけでプレーしてみた

私は俗に言う「ゲーマー」ではない。もちろん子供の頃はゲームボーイやロクヨン、プレステなど、日本の有名なゲームをプレーして育ってきた。だが、高校生になってからはゲームをする時間もなくなり、最近のゲームに関しては全く触れていないレベルだ。
そんな私が唯一プレーしてみたいと思っていたゲームが『ウィッチャー3 ワイルドハント』。
ポーランドに住み始め、ポーランド語を独学で学び始めたことがきっかけで、ポーランドを代表するダークファンタジー小説『ウィッチャー』シリーズを読み始めた。気づけばハマってしまい、最近出た新刊以外は読破。そんな流れでついに『ウィッチャー3 ワイルドハント』をプレーし始め、数ヶ月後、先日一応エンディングまで辿り着いた。まだまだ残っているクエストはあるが、ひとまず区切りとして感想を残しておきたい。
おそらく多くの方は「ゲーム好き」として『ウィッチャー3 ワイルドハント』を遊ぶのだろう。だが私は、小説、そしてポーランド発のゲームだからという全く別の入り口から入った。そんな視点でのプレー感想を、備忘録がてら書いてみる。
1. そもそも『ウィッチャー』とは?

『ウィッチャー』は、ポーランド人作家が書いたダークファンタジー小説で、ポーランドを代表する作品のひとつだ。それをゲーム化したのが、ポーランドのゲーム会社CD PROJEKT REDで、『ウィッチャー3 ワイルドハント』はそのシリーズ3作目にあたる。
ウィッチャーとは、この世界での「職業」の名前。報酬を受け取って怪物を退治する人たちのことで、主人公ゲラルトもその一人だ。魔法が少し使え、人間離れした身体能力を持つため、周囲の人々からはむしろ怪物のように見られることも多い。
舞台はポーランドと明言されているわけではない。それでもスラブ民族の文化や民話が色濃く反映された世界で、物語が進んでいく。
白黒つかない世界観「Lesser evil」
一般的なファンタジーでは、善と悪がはっきり分かれていて、主人公が悪を倒しに行くという流れが多い。ところがウィッチャーは違う。
作中で有名な言葉に「Lesser evil(よりましな悪)」がある。どちらを選んでも悪になる状況で、それでも選ばなければならない。そんな場面が何度も出てくる。
そして主人公ゲラルトは、国同士の争いや種族間の争いに対して中立であろうとする。ところが中立でいようとしても、結局は誰かの争いに巻き込まれていく。そして自分が下した決断が正しかったのか悩み、その結果に苦しんだり、ときには喜んだりする。怪物と呼ばれながら、誰よりも人間くさい。その葛藤が、この物語の一番の魅力だと私は思う。
余談だが、Netflixで実写ドラマ化もされている。ただ、世間的な評価はあまり高くなく、私自身も好みではなかった。原作小説やゲームの空気感が好きな人には、やはり小説とゲームをおすすめしたい。
2. 『ウィッチャー』小説ファンが感心した点
ここからは、小説を読んでからプレーしたからこそ「よくできているなあ」と感じた点をまとめる。
怪物を倒してもレベルアップしない
RPGといえば、敵を倒してレベルを上げるのが基本だと思っていた。私もポケモンやドラクエでは、地道にレベル上げをしてからボス戦に挑むタイプだった。
なので『ウィッチャー3 ワイルドハント』でも最初は普通に出てくる怪物を倒していたのだが、なかなかレベルが上がらない。不思議に思って調べたら、なんと怪物を倒すだけでは経験値がもらえない仕様だった。
経験値が入るのは、クエストをクリアしたとき。「倉庫に怪物が出たので退治してほしい」「なくした指輪を探してほしい」といった、村人の頼みごとをこなして初めて経験値がもらえる。
これは小説の世界観そのものだと感じた。ウィッチャーは、怪物なら何でも倒す人ではない。小説にも、血を飲むことをやめたヴァンパイアが登場する。最初は退治するべきかと思うが、話をするうちに退治するに値しない相手だとわかり、最終的には仲間のような存在になる。
人と関わり、必要なときには怪物を退治する。その積み重ねで、ウィッチャーとして、そして人として成長していく。経験値の仕組みまでが、物語の思想とつながっているのが見事だと思った。
選択が人や国の運命を変える
もうひとつ感心したのが、選択のシーンの多さだ。
アクションでモンスターと戦う場面とは別に、会話の中で自分で選ばなければならない場面がたくさんある。たとえば、貧相な農民を助けた後に、「報酬を受け取る」か「あなたの方がお金を必要だから断る」といった具合の選択だ。
そして選んだ結果で、ストーリーの展開が変わる。変わるのは自分だけではない。その土地に住む人たちや、ときには国やコミュニティ全体の運命までがらりと変わってしまう。
プレーしていると、「さっきのセーブに戻って別の選択をしたらどうなるんだろう」と何度も思った。最近よく耳にするマルチバースやタイムトラベルのように、「もしもの世界」をゲームの中で体験しているような感覚だ。
そして、どちらを選んでもバッドエンディングになるクエストも少なくない。このあたりが、ダークファンタジーの『ウィッチャー』らしい。「Lesser evil」の世界観が、ゲームの仕組みにもしっかり活きている。
女性キャラクターとの恋愛も楽しめる

小説のゲラルトは、無口で不愛想、いつも機嫌が悪そうにしている。ある意味で典型的なポーランド人のようなキャラクターなのだが、なぜかとにかくモテる。小説の中でも、魔術師の女性たちとのあれこれが何度も描かれる。
この恋愛要素も、ゲームの中でしっかり再現されている。メインのヒロインと呼べる女性が2人いて、プレイヤーの選択次第で、最終的にどちらと結ばれるかが変わってくる。
さらに、選択を間違えると、最悪の場合は2人とも失ってしまう可能性もある。うまく相手の心をつかめるかどうかまで含めて楽しめるので、恋愛シミュレーションのようなドキドキ感もある。
小説で体験した世界の中を走り回れる感動


『ウィッチャー』は一応13世紀頃の世界となっているが、様々な王国や街、森が登場する。著者アンドジェイ・サプコフスキの豊かな言葉で表現された街はどれも魅力的でイメージを膨らまされる。そんな街や王国が3Dの世界で忠実に再現されていて、ゲラルトとして走り回れるのも小説ファンとしては感動もの。
特に2026年秋に公開されたリマスター版では、最新の映像技術で作られた世界についうっとりしてしまう。
個人的には、近隣の『グダニスク』がモデルとなってデザインされた街『ノヴィグラッド』の出来には感動させられた。

3. 『ウィッチャー3 ワイルドハント』はポーランド語学習になったのか?
私がこのゲームに興味を持ったもうひとつの理由が、ポーランド語の勉強にもなるのではと思ったからだ。
最近のゲームは、映画のようなカットシーンが多い。『ウィッチャー3 ワイルドハント』もその例にもれず、物語を進めるとキャラクターたちの会話シーンが次々に流れる。そこで、音声をポーランド語、字幕を日本語にしてプレーしてみた。
さて、3ヶ月ほどプレーしてみて、ポーランド語の勉強になったのか。
結論から言うと、「わからない」。
正直なところ、教科書やYouTubeでポーランド語を聞き込む1時間と、ゲームをして過ごす1時間なら、前者のほうが学習効率は圧倒的に高いと思う。
ただ、ゲームは息抜きであり、楽しみでもある。ランニングや筋トレなど、ポーランド語とは全く関係のない趣味と比べれば、少なくとも耳でポーランド語に触れる時間は確実に増える。ここは捉え方次第だろう。
また、ポーランド語がある程度わかるようになった段階でこの方法を始めたせいか、字幕を見なくてもポーランド語だけで内容が理解できた場面も、何度かあった。学習効果は、言語のレベルやプレーを始めるタイミングによって変わってくるのではないかと思う。
4. 『ウィッチャー3 ワイルドハント』の購入情報
ゲームはPCやPS4、スイッチなど、さまざまな機種でプレーできる。私はPC版を購入したが、セール時には1,000円前後で買えることもあるようだ。価格や対応機種は時期によって変わるので、購入前に各ストアで確認してほしい。
また、開発元のCD PROJEKT REDは、次世代機向けに刷新されたバージョンを既存のユーザーへ無料でアップグレード提供した。こんなに長く遊べるゲームを、この価格で楽しめるのは本当にありがたい。
『ウィッチャー3 ワイルドハント』まとめ|入り口が違っても楽しめる
ゲームをほとんどしてこなかった私にとって、『ウィッチャー3 ワイルドハント』は、驚いたりドキドキしたり、ときには怖いと感じたりと、感情をたくさん揺さぶられる体験だった。非現実の世界へ入り込む感覚は、久しぶりに味わう新鮮なものだった。
小説が好きな人、ポーランドに興味がある人、そして私のようにしばらくゲームから離れていた人にこそ、ぜひ一度触れてみてほしい。クエストはまだまだ残っているので、これからものんびりプレーを続けていく予定だ。
























コメント